脂質異常症とは

脂質異常症とは、血液中の脂質（コレステロールや中性脂肪）の値が基準値から外れた状態をいいます。
以前は「高脂血症」と呼ばれていましたが、コレステロールが高すぎる状態だけでなく、善玉コレステロールが少なすぎる状態も含まれるため、現在は「脂質異常症」と表現されています。
血液中の脂質が過剰な状態になると、動脈硬化が促進され、脳血管疾患や心疾患の引き金となるため、注意が必要です。

脂質異常症には以下の3つのタイプがあります

高LDLコレステロール血症

LDLコレステロール（悪玉）が高いタイプです。
LDコレステロールが140mg/dL以上の場合に診断されます。
コレステロールが血管内に蓄積して動脈硬化を進行させ、心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高まります。

低HDLコレステロール血症

HDLコレステロール（善玉）が低いタイプです。
HDLコレステロールが40mg/dL未満の場合に診断されます。
HDLは余分なコレステロールを回収する役割があるため、低いと動脈硬化が進みやすくなります。

高トリグリセライド血症

中性脂肪（トリグリセライド）が高いタイプです。
中性脂肪が150mg/dL以上で診断されます。
過食や飲酒が原因となりやすく肥満と関連し、動脈硬化、心血管疾患のリスクを高めます。
また急性膵炎のリスクを高めることも知られています。

※
上記は空腹時に採血して検査します。
※
上記のうちいずれか、または複数が当てはまる場合、脂質異常症と診断されます。

脂質異常症の原因

脂質異常症の多くは、生活習慣の乱れや加齢・体質が原因です。

原因となる主な生活習慣として以下が挙げられます

  • 脂っこい食事や糖質のとりすぎ
  • 野菜や食物繊維の不足
  • 運動不足
  • 偏った食事、不規則な食事などによる肥満
  • お酒の飲み過ぎ
  • 喫煙
  • 睡眠不足やストレス

など

このほか、糖尿病や甲状腺機能低下症など他の病気が背景にある場合もあります。
さらに遺伝が関係した家族性高コレステロール血症というものもあります。
家族性高コレステロール血症は動脈硬化の進行が早く、若いうちから心筋梗塞や脳梗塞を発症するリスクが高いため、早期に治療を行うことが必要です。

脂質異常症の症状

脂質異常症は初期にはほとんど自覚症状がありません。
そのため、健康診断などの血液検査で偶然発見されることが多くなっています。
ただし放置していると、様々な疾患の原因となります。

脂質異常症が引き起こす疾患

脂質異常症は、血管の内側に脂質が蓄積されることによって起こる「粥状動脈硬化（アテローム硬化）」を引き起こします。
粥状動脈硬化とは、血管の内側にコレステロールなどがたまってプラーク（粥状の塊）を形成し、血管が狭くなる病態です。
進行すると血流が悪化し、またプラークが破れると血栓ができて血管を詰まらせてしまい、命に関わることもあります。
これは全身の動脈で起こりうるもので、以下のような深刻な合併症を引き起こすリスクが高まります。

心筋梗塞・狭心症

心臓の冠動脈にコレステロールが蓄積し、動脈硬化が進行すると血流が悪化します。
これにより胸痛や息切れなどを起こすのが狭心症、血管が詰まって心筋が壊死してしまうのが心筋梗塞です。

脳梗塞・脳出血

脳の血管が動脈硬化により狭くなったり詰まったりして起こるのが脳梗塞です。
部位によっては体の麻痺や言語障害引き起こします。
血管か破れてしまうと脳出血を引き起こし、命に関わります。

末梢動脈疾患

足などの末梢の動脈が粥状動脈硬化で狭くなり、歩行時の足の痛みや冷感が現れます。
重症になると壊死に至ることもあり、動脈硬化の全身性を示す重要な病気です。

脂質異常症を指摘されても、症状がないからと放置していると、ある日突然、上記のような疾患を発症することもあります。異常を指摘されたら、早めに当院にご相談ください。

脂質異常症の治療

治療の基本は、生活習慣の改善と、必要に応じた薬物療法です。
患者様の年齢や体質、合併症の有無などに応じて、無理のないプランで管理していきます。

生活習慣の改善

食事療法

  • 脂肪分（とくに飽和脂肪酸やトランス脂肪酸を含む乳製品や加工食品）を減らすことを心がけます。
  • 魚（青魚など）や豆類、野菜を多く摂取するようにします。
  • 食物繊維の多い食事（玄米・海藻・きのこなど）を意識しましょう。
  • 甘い飲み物やスイーツは控え目に。
  • アルコールは適量に抑えましょう。

運動療法

  • 1日30分程度の有酸素運動（ウォーキングや軽いジョギングなど）を週3～5回することを目指します。
  • 筋力トレーニングとの併用で、基礎代謝も向上し脂質代謝が改善します

その他

  • 喫煙はHDL（善玉）コレステロールを低下させますので、禁煙しましょう。
  • 睡眠とストレス管理も重要です。

薬物療法

生活習慣の改善だけでは数値が十分に改善しない場合や、すでに動脈硬化のリスクが高い方には薬物療法を行います。

主な薬には以下のようなものがあります。

スタチン系薬

LDLコレステロールを下げ、動脈硬化予防に有効とされています。

フィブラート系薬

中性脂肪を下げ、HDLコレステロールを上昇させることが期待されます。

EPA製剤

青魚由来の薬で、中性脂肪を下げ、抗炎症作用も期待されます。

小腸コレステロールトランスポーター阻害薬（エゼチミブ）

小腸でのコレステロール吸収を抑えることで、血液中のLDLコレステロールを下げる薬です。

これらは副作用や相互作用にも注意が必要なため、定期的に検査をしながら治療を進めていきます。