消化器とは、口から食道、胃、小腸、大腸、肝臓、胆のう、膵臓など、食べ物を消化・吸収し、老廃物を排出するための臓器の総称です。
当院の消化器内科では、日本消化器病学会 消化器病専門医である院長が、これらの臓器に関連するさまざまな病気の診断と治療を行います。
食欲不振や胃の痛み、便通異常など、日常的な不調の多くが消化器と関係していることがあり、早期に適切な診断と治療を行うことで重症化を防ぐことができます。
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逆流性食道炎とは、胃酸や胃の内容物が食道へ逆流することで、食道の粘膜が炎症を起こす病気です。
通常、胃と食道の境目には下部食道括約筋があり、胃酸の逆流を防いでいますが、この筋肉の機能低下や胃酸の過剰分泌により逆流が生じます。
胸やけ、喉の違和感、酸っぱい液体がこみ上げる呑酸、みぞおちの不快感、咳や声のかすれなどがあります。
これらは特に食後や就寝時に悪化する傾向があります。
加齢による筋力の低下や、食べすぎ、脂っこい食事、肥満、喫煙、飲酒、ストレス、ピロリ菌除菌後の胃酸増加などが関与しています。
症状が強い場合や薬が効かない場合に胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)を行い、食道粘膜の炎症やびらんを確認します。
必要に応じて食道内pH検査や食道内圧検査を行うこともあります。
生活習慣の改善(食後すぐに横にならない、就寝時の上半身挙上、体重減少、禁煙など)と、薬物療法(プロトンポンプ阻害薬、H2ブロッカー、制酸薬)を組み合わせます。
多くの方が薬により症状が改善しますが、再発しやすいため継続的な管理が重要です。
胃・十二指腸潰瘍とは、胃や十二指腸の粘膜が胃酸や消化酵素によって深く傷ついた状態を指します。
潰瘍は炎症が進行して粘膜がえぐれた状態で、放置すると出血や穿孔といった重篤な合併症につながることもあります。
みぞおちの痛み(とくに空腹時)、食後のもたれ、胸やけ、吐き気、膨満感、食欲不振などがあります。
出血を伴うと黒色便や吐血が見られ、穿孔を起こすと激しい腹痛やショック症状を伴います。
多くはピロリ菌感染で、その他にNSAIDs(解熱鎮痛薬)の常用、喫煙、過度の飲酒、ストレス、不規則な生活習慣などが挙げられます。
ピロリ菌は胃粘膜を傷つけ、胃酸の影響を受けやすくすることで潰瘍を引き起こします。
診断には胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)が用いられ、潰瘍の位置・大きさ・深さを確認し、悪性腫瘍との鑑別のために組織を採取することもあります。
また、ピロリ菌の検査(迅速ウレアーゼ試験・培養検査など)も併せて行います。
プロトンポンプ阻害薬などの胃酸分泌抑制薬、粘膜保護薬を使用し、ピロリ菌が陽性であれば除菌療法を実施します。
再発防止のためには、薬の継続とともに、アルコールや刺激物の摂取制限、喫煙の中止、規則正しい食生活が重要です。
胃がんは、胃の粘膜から発生する悪性腫瘍で、日本では比較的多いがんの一つです。
近年はピロリ菌除菌の普及や食生活の改善により発症率は減少傾向にありますが、依然として中高年層を中心に発見されることが多く、早期発見が極めて重要です。
初期には無症状であることが多く、進行するにつれてみぞおちの痛み、食欲不振、体重減少、吐き気、黒色便、吐血などの症状がみられることがあります。
症状が出た時点でかなり進行している場合もあるため、健診や定期的な胃カメラ検査を積極的に受けるようにしましょう。
ピロリ菌感染が大きく影響しているほか、喫煙、塩分の多い食事、飲酒、加齢、遺伝的要因などが関わっていると考えられています。
胃カメラが最も有効で、病変の視認だけでなく、組織の一部を採取し、がんかどうかを確認する生検も可能です。
バリウム検査では見落とされる小さな病変も、胃カメラでは発見しやすくなります。
病期(ステージ)に応じて異なります。早期がんであれば、内視鏡による粘膜切除術(ESD)が選択されることもあります。
進行がんでは、外科手術(胃の一部または全部の切除)や化学療法(抗がん剤)が行われます。
患者様の状態や希望に応じて、適切な治療方針を検討します。
ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)は、胃の粘膜に生息する細菌で、慢性胃炎や胃・十二指腸潰瘍、さらには胃がんの原因として知られています。
ピロリ菌は、主に幼少期に経口感染し、一度感染すると自然に排除されにくく、長期間にわたって胃の粘膜に炎症を引き起こします。
ピロリ菌に感染している人の多くは無症状ですが、一部では胃の不快感や膨満感、食欲不振、腹痛などがみられます。
慢性的な炎症が持続すると、胃の粘膜が萎縮し、萎縮性胃炎や胃がんのリスクが高まります。
胃カメラ時に行う組織検査、尿素呼気試験、血液検査(抗体検査)、便中抗原検査などがあります。
症状や胃の状態に応じて最適な方法を選択します。
ピロリ菌が検出された場合には、除菌療法を行います。
これは、2種類の抗生物質と1種類の胃酸分泌抑制薬を1週間服用することで行われ、成功率は80〜90%以上とされています。
除菌後は再感染防止のためにも、定期的な胃のチェックが勧められます。
機能性ディスペプシアは、胃に明らかな異常がないにもかかわらず、慢性的な胃の不快感や膨満感、早期飽満感、食後のもたれ感などが続く状態です。
検査では器質的な病変が見つからないため、ストレスや自律神経の乱れ、胃の運動機能の低下などが関与していると考えられています。
食後すぐに満腹になる、胃が重い、みぞおちが張る、軽い吐き気がある、胃がムカムカするなどが挙げられます。
これらは日常生活に支障をきたすこともあり、QOL(生活の質)を大きく低下させます。
胃カメラによって、胃がんや潰瘍などの疾患ではないことを確認することが重要です。
画像検査や血液検査、ピロリ菌の検査を行い、他の疾患の可能性が否定されれば、機能性ディスペプシアと診断されます。
生活習慣の見直しや食事指導、ストレス管理が基本です。
薬物療法としては、胃の運動を促進する薬(消化管運動改善薬)や胃酸を抑える薬、抗不安薬などが使用されます。
患者様の症状や体質に応じた治療を行い、患者様に寄り添って、根気よく改善を図っていきます。
過敏性腸症候群(IBS)は、腸に炎症や腫瘍などの器質的な異常がないにもかかわらず、慢性的に腹痛や腹部不快感、便通異常(便秘や下痢)などを繰り返す疾患です。
ストレスや自律神経の乱れ、腸内環境の変化などが関係しているとされ、若年層から中高年層まで幅広くみられます。
腹痛や腹部の張り感、便秘や下痢、もしくはその繰り返し、便意切迫感、残便感などがあり、ストレスや食事、生活習慣に影響されやすい傾向があります。
トイレから離れられなくなるなど、生活の質(QOL)を大きく落としてしまいます。
診断には、他の消化器疾患との鑑別が必要です。
血液検査、便検査、大腸カメラなどを行い、腫瘍や炎症性腸疾患など別の疾患である可能性が否定されれば、過敏性腸症候群と診断されます。
まずは生活習慣と食事内容の見直しが基本です。
食物繊維の摂取、低FODMAP食などが推奨されることもあります。
薬物療法としては、整腸剤、下痢止めや便秘薬、抗不安薬、抗うつ薬などが症状に応じて使用されます。
またポリアクリル樹脂の内服薬は便秘型、下痢型の双方に有効とされています。
大腸がんは、大腸の粘膜から発生する悪性腫瘍で、日本ではがん死亡の上位に位置する疾患です。
とくに近年は食生活の欧米化や高齢化の影響で増加傾向にあります。
早期に発見すれば内視鏡治療も可能です。
初期には症状がほとんどないことが多いですが、進行すると便に血が混じる(血便)、便が細くなる、下痢と便秘を繰り返す、腹痛、体重減少、貧血などが現れます。
とくに50歳以上でこのような症状がある方は早期受診が望まれます。
食物繊維の不足、赤身肉や加工肉の過剰摂取、運動不足、肥満、喫煙、過度の飲酒、遺伝的要因などが挙げられます。
大腸カメラが最も有効です。
ポリープの段階で発見し、その場で切除することでがん化を防ぐことも可能です。
便潜血検査も簡便なスクリーニングとして有用ですが、陽性の場合は必ず大腸カメラによる精密検査が必要です。
がんの進行度に応じて内視鏡的切除、外科手術、化学療法、放射線治療などを組み合わせて行います。
定期的な検診と早期発見が最も重要なポイントです。
便通異常とは、便秘または下痢の状態が慢性的に続き、日常生活に支障をきたす状態を指します。
便秘は「排便回数が週に3回未満」「硬くて出にくい便」などの状態、下痢は「水様便が頻繁に出る」などを指し、それぞれにさまざまな原因があります。
便秘の症状には、排便困難、残便感、腹部膨満感、食欲不振などがあり、下痢では腹痛、頻回の排便、脱水症状、体重減少が伴うこともあります。
生活習慣や食事、ストレス、薬剤、などが関係する場合があります。
また何らかの疾患が関係していることも考えられます。
原因となる疾患としては、過敏性腸症候群、大腸がん、感染性胃腸炎、潰瘍性大腸炎、腸閉塞症などがあります。
血液検査や腹部エコー、大腸カメラ、CT検査、血液検査などを行い、診断していきます。
便通異常が長く続く場合は、早めの検査が推奨されます。
原因となる疾患がある場合は、その治療を行います。
また生活習慣の見直し(規則正しい生活、水分・食物繊維の摂取、適度な運動)や、症状に対する薬物療法(下剤、整腸剤、止瀉薬など)も検討します。
とくに高齢の方では便秘に伴う合併症にも注意が必要です。