便に混じる目に見えない血液のサイン
便潜血とは、肉眼では確認できない便中の血液(潜血)を検出するものです。
主に消化管、とくに大腸や直腸からの出血の有無を確認するために行われます。
便に混じった血液は、がんやポリープなどの病気の兆候であることもあり、早期発見の一助として重要です。
定期的なスクリーニングでリスクを軽減
日本では特に大腸がんの早期発見を目的として、40歳以上の方を対象に便潜血検査が行われています。
大腸がんは初期には自覚症状が少ないため、このような検査を通じて早期に異常を見つけることが極めて重要です。
便潜血検査は、自宅で便を採取して提出するだけの簡単な検査です。
通常、2日分の便を採取する「2日法」が用いられ、精度が高くなっています。
専用の容器で便の一部を採取し、提出された検体は、ヘモグロビン(血液中の成分)を検出する化学的な方法で分析されます。
便潜血検査で陽性となった場合には、消化器内科などでの精密検査が推奨されます。
一般的には、大腸カメラ(内視鏡)による検査が行われ、ポリープや腫瘍、炎症などの病変の有無を直接確認することができます。
早期のポリープであれば、その場で切除可能なケースもあります。
がん以外にもさまざまな疾患が関与
便潜血が陽性になる原因は、大腸がん以外にも多岐にわたります。
痔や腸炎、良性ポリープ、潰瘍性大腸炎などでも出血が見られることがあります。
したがって、陽性=がんと直結するわけではなく、医師による診断と追加検査が必要です。
専門医による適切な判断が不可欠
便潜血が陽性であったり、長期間陰性が続いている場合でも、不安があれば内科や消化器内科の専門医に相談することが勧められます。
クリニックや病院では、症状や家族歴、年齢などをふまえた診療が行われます。
自覚症状がなくても定期的な検査を
厚生労働省の公式見解に基づき、日本では40歳以上の方に対して年1回の便潜血検査が推奨されています。
症状がない場合でも、定期的に検査を受けることで、大腸がんの早期発見率が大きく向上することが証明されています。
出血や便通異常があるならすぐ医師へ
血便や下痢・便秘の異常がある場合、たとえ過去の検査が陰性であっても、すぐに医療機関を受診するべきです。
症状のある状態での検査や診察は、単なるスクリーニングよりもさらに重要です。
陽性結果が出た場合、がんの可能性も否定できませんが、痔やポリープなどの良性疾患でも陽性になることがあります。
追加の精密検査が必要です。
食事制限などは必要ありませんが、便を正しく採取することが大切です。
生理中の女性や痔の出血がある場合は、検査時期をずらすことが望ましい場合もあります。
陰性でも、今後の健康が保証されたわけではありません。
定期的な検査を継続することが最も重要です。
このように、「便潜血検査」は大腸がんをはじめとした消化器系疾患の早期発見に欠かせない検査です。
症状がなくても年1回の受診を心がけ、体のサインを見逃さないようにしましょう。
便の色で体の異変を察知、異常な便色が示す消化管の出血サイン
黒色便や血便は、消化管からの出血が原因で起こる症状です。
通常の便と違い、「黒っぽい」「赤みが混じる」など明らかな変化があるため、消化器系の病気を早期に察知する重要な手がかりとなります。
出血部位で色が異なる
一般に、便が黒くなるのは胃や十二指腸など上部消化管からの出血(タール便)が原因です。一方、鮮やかな赤い血便は直腸や肛門など下部消化管からの出血によることが多く、出血部位の違いで色が変わります。
消化性潰瘍による出血は黒色便として現れます。潰瘍からの出血は胃酸により変色し、タールのような黒色になります。吐き気や上腹部痛を伴うこともあります。
大腸の腫瘍性疾患では、便に血液が混じることがあり、血便として気づかれる場合があります。
特に便の表面に赤い血が付着している場合や、持続的に血便が続くときには精密検査が必要です。
肛門周囲の出血は、鮮やかな赤色の血便として現れます。
排便時の痛みや残便感、出血量の多さなどが特徴で、内痔核や裂肛の可能性が考えられます。
一見似た症状でも背景は多様
黒色便と血便の鑑別には、便の色調や出血の持続時間、併発する症状などの詳細な問診が重要です。
黒色便は消化管上部(胃や十二指腸)、血便は消化管下部(大腸や直腸)が原因であることが多く、検査で正確な部位の特定が求められます。
鉄剤、活性炭、ビスマス製剤など一部の薬物は、便が黒くなることがあります。
これらは消化管出血ではない「偽性黒色便」であり、問診や薬歴の確認で区別が可能です。
便の色だけでなく、発熱・腹痛・体重減少などの全身症状を伴う場合は、炎症性腸疾患(クローン病や潰瘍性大腸炎)などの疾患の可能性も視野に入れて鑑別を進める必要があります。
原因を明らかにするための医療的アプローチ
初期スクリーニング検査として最も一般的です。
目に見えない出血も検出でき、大腸がん検診などでも広く用いられています。
陽性の場合は、内視鏡検査などの追加検査が勧められます。
最も確実な診断方法です。出血源を直接確認し、同時に組織の採取(生検)や止血処置が可能です。症状や出血の色に応じて、胃カメラまたは大腸カメラを選択します。
貧血の有無や炎症の程度を確認するために血液検査が行われます。
出血が大量で緊急性がある場合は、CT検査によって出血点の特定や他の疾患の除外が行われます。
症状に応じた適切な医療を、原因疾患の治療が基本
黒色便や血便そのものを直接治療するわけではなく、原因となる疾患の治療が必要です。たとえば、潰瘍が原因であれば胃酸分泌抑制薬や除菌療法、大腸ポリープであれば内視鏡的切除が行われます。
大量出血がある場合や、意識障害・頻脈・血圧低下などのショック症状がある場合は、迅速な止血処置や輸血が必要になることがあります。救急医療機関の受診が勧められます。
便の色に明らかな変化があるが症状が軽い場合でも、大腸がんなど重篤な疾患が潜んでいる可能性があります。自己判断は避け、専門の医師による診療を受けることが大切です。
特に腹痛・貧血・吐き気を伴う場合は消化管出血の可能性が高く、早急な受診が必要です。自覚症状がない場合でも、出血量が少ないだけで重大な疾患が隠れていることもあります。
痔による出血は多いものの、便の表面に血が付く場合や、便全体に血が混じる場合は、大腸の病気の可能性もあるため、過信せず検査を受けましょう。
出血を伴う便に対して市販薬で対処するのは適切とは言えません。
むしろ診断を遅らせるリスクがあるため、便の異常に気づいた時点で専門の医師に相談すべきです。
便の異常は、体の「警告サイン」です。黒色便・血便に気づいたら、放置せずに医療機関を受診し、適切な検査と治療を受けることが健康を守る第一歩となります。
肝臓の健康を映し出す“血液のサイン”
肝機能検査とは血液検査で、肝臓の合成機能、分解機能、胆汁の流れ、細胞障害の程度などを多角的に評価する検査です。GPT(ALT)、GOT(AST)、γ-GTP、ALP、ビリルビン、アルブミン、プロトロンビン時間などが指標として使われ、基準値を超えると「肝機能検査異常」と診断されます。
B型・C型肝炎は慢性的な肝細胞の破壊と再生を繰り返し、ASTやALTの上昇が特徴的です。無症状のことも多く、血液検査でしか発見されない場合があります。
肥満や生活習慣病に伴い脂質が肝細胞に蓄積されるNAFLDが進行するとNASH(非アルコール性脂肪性肝炎)となり、酵素の上昇や肝硬変化に進展する恐れがあります。
継続的な飲酒によりγ-GTPやAST/ALTが上昇し、やがて肝硬変に至ることがあります。病歴と合わせて診断されます。
薬剤や漢方、ハーブなどによって肝細胞障害が起こることがあります。
ALTやALPなどが異常値を示します。
胆管結石や胆道がんにより胆汁の流れが妨げられると、ALP・γ-GTP・ビリルビンが上昇します。黄疸やかゆみを伴うことがあります。
肝臓の合成機能が低下するとアルブミンとともに出血傾向を示すPT延長が生じ、肝硬変進行を反映します。
直接(抱合)ビリルビンの上昇が胆汁うっ滞、非抱合(間接)は溶血や肝細胞障害が原因と考えられます。
① 問診と身体診察
食習慣、アルコール習慣、薬歴、過去の肝炎歴を丁寧に聞き取ります。
肝区域の触診・打診で肝腫大や硬さを評価します。
② 追加の血液検査
肝炎ウイルスマーカー(HBs抗原、HCV抗体など)、脂質・血糖、自己抗体(AIH疑い時)なども確認します。
③ 画像検査と特殊検査
腹部超音波で脂肪肝・胆石・腫瘍を見るほか、必要に応じてCT/MRIを行います。
肝硬変や線維化の程度はFibroScanなどで非侵襲的に測定されます。
④ 組織診(肝生検)
脂肪肝の進行度、NASHの病理評価、また原発性胆汁性肝硬変などでは肝生検が行われます。
生活習慣改善(減量、運動、栄養指導)が基本です。
進行例では医師による定期的なフォローが推奨されます。
B型、C型肝炎は治療薬(インターフェロン、核酸アナログ、DAAなど)によりウイルス除去・抑制が可能になっています。
禁酒が最重要です。アルコール外来や専門医のサポートを受けることが推奨されます。
結石では内視鏡的除去、がんの場合は外科的治療や内科的管理が必要です。
原因薬の中止・変更を検討し、必要なら肝機能をサポートする薬剤(肝庇護薬など)を併用します。
継続的な上昇であれば、脂肪肝や初期の肝炎、薬剤影響の可能性があります。
医師と相談しながら対応を。
NAFLDや軽度肝障害では運動と食事療法のみで酵素値が改善するケースも多いです。
肝硬変に至っても、原因の除去(例:ウイルス除去、禁酒)や合併症(腹水・食道静脈瘤等)の管理により、QOLを維持できます。
肝機能異常は自覚症状が出にくく、血液検査でしか分からないことも多い“隠れた病気”。早期発見・的確な対処で重症化を防ぐことができます。気になる検査異常があれば、ぜひ当クリニックでご相談ください。
「最近痩せた…」などの体重減少は何かのサインかもしれません
体重減少とは、日常的な活動や食事内容を変えていないにもかかわらず、体重が減っていく状態を指します。一般的に、半年間で体重の5%以上が減少した場合は医学的な精査が必要とされています。意図的なダイエットによる減少との区別が重要です。
問診では、減少のスピード・期間・意図的か否か・食欲や便通の変化・発熱や倦怠感などの症状の有無を確認します。
例えば、夜間の発汗・咳・微熱を伴う場合は結核、発熱・リンパ節腫脹なら悪性リンパ腫も考慮します。
糖尿病や甲状腺疾患、過去のがん歴、内服薬、ダイエット習慣なども鑑別に重要です。
また、急激なダイエットによる減少か否かも判断材料になります。
加齢による食欲低下や咀嚼嚥下機能の衰え、複数の基礎疾患の影響で体重減少を呈することがあり、多因子的である点に留意が必要です。
糖尿病や甲状腺疾患は適切な内科的治療、がんは外科・化学療法・放射線治療が必要になります。根本治療によって体重減少は次第に改善します。
栄養士と連携し、食事内容の見直し・補助食品の提案を行います。
経口摂取が困難な場合は、経管栄養や点滴による栄養管理が検討されます。
うつ病や摂食障害では、精神療法や薬物療法を通じたサポートが不可欠です。家族や周囲の理解と協力も回復への鍵です。
特に食生活や運動習慣を変えていないのに2~3kg以上減ってきた場合は、内科での精査をおすすめします。がんや糖尿病などの初期サインのこともあります。
ダイエットは目的とコントロールのある減少であるのに対し、疾患による体重減少は予期せぬ形で進行し、筋力低下や倦怠感を伴うことが多いです。
年齢や体質に合わせた適切なカロリー・栄養摂取、過度な制限のない生活習慣が体重維持には最適です。疑問があれば専門の医師や栄養士に相談しましょう
「体重減少」は、体からの大切なサイン。早期に原因を突き止めることで、健康を守ることができます。
「お腹がゆるい」は病気のサイン?誰にでも起こるが油断できない消化器症状
下痢とは、通常よりも水分を多く含む便が頻繁に出る状態を指します。食事やストレスなど一時的なものから、感染症や重大な病気のサインであることもあります。ここでは、原因や鑑別診断、対処法をわかりやすく解説します。
一過性と慢性では意味が異なる
「下痢」とは、1日の便の回数が増え、かつ便の水分量が75%以上の状態です。1日3回以上の水様便が出るとき、明確な下痢とされます。
急性下痢は数日〜1週間以内に治まるもので、感染症や食事が原因です。
一方、慢性下痢は3週間以上持続し、大腸や膵臓などの病気が背景にある可能性があります。
冷たい飲食物、過剰な脂質、アルコール、ストレスなどにより胃腸の機能が一時的に乱れ、下痢を起こすことがあります。
代表的な原因菌はサルモネラ、大腸菌(O157)、カンピロバクターなど。
ウイルスではノロウイルスやロタウイルスが有名です。発熱や嘔吐、強い腹痛を伴うことも。
乳糖不耐症、膵臓の酵素分泌低下、胆汁酸の異常などが原因で栄養がうまく吸収できず、便が水様になります。
抗生物質、下剤、制酸薬などの副作用で下痢が起こることがあります。
とくに抗菌薬により腸内細菌のバランスが崩れ、「偽膜性大腸炎」が生じることもあります。
下痢に先行して腹痛が現れることが多く、食後にお腹がゴロゴロ鳴る「蠕動亢進音」が特徴です。
感染性の下痢では高熱や嘔吐、脱水症状が伴います。
とくに高齢者や小児では水分補給が重要です。
大腸の病気や感染による炎症があると、便に血液や粘液が混じることがあります。
潰瘍性大腸炎などの炎症性疾患も鑑別に挙がります。
急性かつ激しい下痢と腹痛、発熱があれば細菌やウイルス感染が疑われます。
便培養検査が有効です。
慢性の腹痛と便通異常(下痢や便秘)を繰り返す機能性疾患です。
ストレスとの関連が強く、器質的異常はありません。
潰瘍性大腸炎やクローン病は、慢性的な下痢、血便、体重減少を伴います。
内視鏡検査が診断に必要です。
膵疾患、胆道閉塞、セリアック病などにより、消化吸収がうまくいかず下痢が続くことがあります。
3週間以上続く下痢や、血便、夜間の便意などは腸の病気が疑われ、専門医による診断が必要です。
細菌感染や重症な腸炎の可能性があるため、速やかな内科・消化器科の受診をおすすめします。
脱水症状を防ぐため、経口補水液や薄めたスポーツドリンクが有効です。
高齢者は特に注意が必要です。
うどん、おかゆ、りんごのすりおろし、バナナなどが適しています。
脂っこい食事や冷たい飲み物は避けましょう。
市販の整腸剤やヨーグルトなどの乳酸菌が、腸内環境を整えるのに役立ちます。
ただし、効果に限界もあるため注意が必要です。
絶食が必要なのは激しい嘔吐や重度の腹痛がある場合です。
多くは、消化にやさしい食事を取ることで腸の回復を助けます。
下痢止め(ロペラミド等)は一時的な対症療法ですが、感染性の場合は逆効果のこともあり注意が必要です。
慢性化した下痢や異常便(黒色、血便)は必ず医師に相談しましょう。
特に60歳以上では重症化しやすいため注意が必要です。
「下痢」は日常的でありながら、重篤な病気のサインでもあります。正しい情報と早めの対処で、安心した生活を取り戻しましょう。
“お腹が重い”“スッキリ出ない”は便秘のサイン
便秘とは、排便回数が週に3回未満、あるいは便が硬くて出づらく「出してもスッキリしない」状態を指します。
大腸で便が長く滞留すると水分が吸収され、さらに硬便になって、排便が困難になる負のループに陥りがちです。
これらが慢性的に続くと生活の質(生活)にも影響を及ぼします。
薬の影響や甲状腺機能低下症などの代謝性疾患は血液検査で疑いを確認します。
変更・調整が有効な場合もあります。
排便習慣や生活習慣、食事・ストレス状況などを詳細に問診します。
便の性状や頻度の一覧表を記録によって見える化することもあります。
1.生活習慣の改善(ファーストステップ)
2.薬物療法
3.重症例や器質性疾患への対応
大腸ポリープやがんがある場合は、内視鏡的切除や外科的治療が必要になります。
また、器質性では原因疾患への治療が中心になります。
毎日出なくても構いませんが、硬い便が続いたり、残便感があれば便秘と考えて対処が必要です。
便秘が続くときは、まずは生活習慣を見直し、薬は短期間のみ使用が望ましいです。
食物繊維や運動、習慣づくりと併せて行うことで効果が高まります。
「便秘」は身近な症状ですが、放置すると生活の質が大きく低下し、大腸の病気を見逃すこともあります。気になることがあれば、早めに医師に相談し、検査・生活改善・治療を進めていきましょう。
胃もたれは胃腸のSOSサイン
胃もたれとは、食後に胃が重く感じたり、消化が進んでいないような不快感が続く状態を指します。
明確な痛みではなく、「張っている」「重い」「詰まっている」といった違和感が特徴で、多くの場合、食事や生活習慣、ストレスといった要因が関与しています。
たとえ一過性でも、頻繁に胃もたれが続くようであれば注意が必要です。
胃の機能や消化能力に問題がある場合、適切な対処をしないと慢性化することもあります。軽視せずに原因を知ることが重要です。
代表的な原因として、「暴飲暴食」「脂肪の多い食べ物」「食事の時間が不規則」といった生活習慣が挙げられます。
食べ物の消化に時間がかかることで、胃が長時間働き続け、もたれを感じやすくなります。
年齢を重ねると、胃の消化機能が徐々に低下し、若い頃と同じ食事でも胃もたれを起こしやすくなります。
これは胃酸の分泌量の減少や胃の運動機能の低下が影響していると考えられています。
ストレスによって自律神経のバランスが崩れると、胃腸の働きが抑制され、消化機能が低下します。
精神的な緊張状態が続くと、胃の「機能性障害」として胃もたれが起こることもあります。
明らかな器質的異常(胃潰瘍など)がないのに、慢性的な胃もたれや腹部不快感がある状態を「機能性ディスペプシア」と呼びます。
生活習慣の見直しや、消化を助ける薬物療法が行われます。
胃の内壁が傷ついて起こる潰瘍も、胃もたれの原因になります。
とくに空腹時や夜間に不快感が強く出るのが特徴で、胃痛を伴うことが多く、内視鏡検査による診断が必要です。
初期症状が乏しいため見落とされがちですが、胃がんや膵がんの初期症状として「胃もたれ」が出ることがあります。
とくに体重減少や食欲不振を伴う場合は早期に医師の診察を受けるべきです。
「腹八分目」を意識し、脂っこいものや消化の悪い食材を控えることが重要です。
ゆっくりよく噛んで食べることで、胃への負担も軽減されます。
食後すぐに横になると、胃内容物の排出が遅れ、もたれ感が強くなります。
食後は30分〜1時間程度、軽く動いたり座って過ごすことが勧められます。
冷たい飲み物や炭酸飲料は胃の働きを弱める可能性があるため、温かいお茶や白湯などが適しています。
アルコールやカフェインの過剰摂取も避けましょう。
自己判断で様子を見るのではなく、2週間以上も症状が続いたり、他の症状(吐き気・嘔吐・体重減少)を伴う場合には、早めに内科や消化器内科を受診しましょう。
必要に応じて血液検査や内視鏡検査が行われます。
医療機関では、症状の経過、生活背景、服薬状況などを丁寧に確認した上で、必要に応じて胃薬(プロトンポンプ阻害薬や消化酵素薬など)や生活指導が行われます。
一時的なものであれば問題ないことが多いですが、毎回のように症状が出る場合は、機能性ディスペプシアや胃炎などの可能性もあるため、医師に相談しましょう。
おかゆ、豆腐、白身魚、煮野菜など、胃にやさしい食事がおすすめです。
発酵食品(ヨーグルト、みそ)も腸内環境の改善に役立ちます。
胃薬や消化酵素の市販薬は一時的な対処に使えますが、根本的な原因が治るわけではありません。
症状が続く場合は、必ず医師の診察を受けてください。
胃もたれは多くの人が経験する日常的な症状ですが、背後に病気が隠れていることもあります。生活習慣の見直しと、医師の適切な診断を受けることが、胃腸の健康を保つ第一歩です。
「喉が渇く」はただの水分不足?それとも病気のサイン?
口渇(こうかつ)は、口の中が乾いたり、強い喉の渇きを感じる状態を指します。
単なる水分不足のこともあれば、身体の不調や重大な病気の初期症状であることもあります。
口渇の原因、関係する病気、受診の目安、対処法について医師の視点からわかりやすく解説します。
暑い日や運動後、発熱時など、体内の水分が失われる場面では、体が水分補給を促すために口渇を感じます。
特に高齢者では喉の渇きを感じにくく、注意が必要です。
唾液の分泌が少なくなると、口の中が乾燥して口渇を強く感じます。
これは加齢やストレス、薬の副作用(抗うつ薬、抗ヒスタミン薬など)でも見られます。
糖尿病では血糖値が高くなることで、尿中に糖が出て水分を喪失しやすくなり、口渇や多飲を引き起こします。
頻尿・体重減少などが併発することも。
緊張やストレスが強いときは、自律神経の影響で唾液分泌が減少し、口が渇くことがあります。これも一過性の口渇の原因です。
のどが渇いて水をたくさん飲む、夜間頻尿がある、体重が減ってきた場合などは、糖尿病を疑います。早期発見・治療が合併症予防の鍵になります。
自己免疫疾患のひとつで、唾液腺や涙腺の働きが障害されることで、口腔乾燥やドライアイが起こります。
女性に多く、リウマチと合併することもあります。
新陳代謝が活発になり、発汗・口渇・頻尿・体重減少といった症状が現れます。
動悸や手の震えなども伴う場合は、早期の内科受診が勧められます。
抗うつ薬、降圧薬、抗アレルギー薬など多くの薬が唾液の分泌に影響します。
お薬手帳の確認や、主治医への相談が大切です。
水分摂取の状況、喉の渇きを感じるタイミング、他の症状(頻尿・発熱・疲労など)の有無を詳しく確認します。
服用中の薬や既往歴も重要です。
血糖値(空腹時・HbA1c)をはじめ、甲状腺ホルモン、電解質(ナトリウム・カリウム)、腎機能などを評価することで、代謝性疾患や内分泌異常の有無を確認します。
尿糖・尿たんぱく・浸透圧などを調べ、糖尿病や脱水の程度を把握します。
シェーグレン症候群が疑われる場合には、唾液腺の機能を評価するためのガムテストや唾液腺造影、血清抗体検査などが行われます。
糖尿病や甲状腺疾患などは、専門医による診療が必要です。
薬の調整や、必要に応じた内服・注射治療が行われます。
室内の乾燥を防ぎ、就寝中の口渇には加湿器やマスクの使用が効果的です。
また、口腔内を清潔に保つことで感染リスクを下げることもできます。
一過性の水分不足によるものもありますが、長期間続く場合や症状が強い場合は、原因疾患を疑う必要があります。
水や麦茶、経口補水液などが適しています。
カフェインやアルコールは利尿作用があり、かえって脱水を招く場合があります。
こまめな水分摂取に加え、梅干しや酸味のある食品、無糖ガムなどで唾液分泌が促されます。
加齢による口腔乾燥には、保湿ジェルの活用も有効です。
「口渇」は日常的に経験する症状のひとつですが、背景にある疾患や生活習慣を見直すことで、早期に改善や予防が可能です。気になる場合は、早めの受診と適切な情報収集が重要です。
腹痛は体からの重要なサイン!
腹痛(ふくつう)とは、お腹のどこかが痛む状態を指します。
症状の強さや種類(刺すような痛み・鈍い痛み・消化不良による張り感など)、痛む位置によって原因や対応が異なります。
そのため、「腹痛=一律の病気」と考えるのは危険で、丁寧な鑑別診断が重要です。
右下腹部に激しい痛みが出現し、発熱、食欲不振、嘔吐が伴うことが多い。
触診で反跳痛が出る場合もあり、迅速な診療と虫垂切除が必要です。
右上腹部に持続する鋭い痛みが現れ、背部への放散痛、発熱や黄疸を伴うこともあります。
超音波検査で診断され、内視鏡的治療や手術が適応になります。
左右どちらかの上腹部に強い痛みが放散し、激しい嘔吐や発熱を伴います。
血清アミラーゼやリパーゼの上昇、CTでの膵の腫大などが診断に有効です。
お腹の張り、激しい腹痛、嘔吐、便通停止などが特徴です。
緊急の外科的処置が必要となるケースもあります。
上腹部に鈍い痛みがあり、食後悪化(胃潰瘍)、空腹時や夜間に悪化(十二指腸潰瘍)する傾向があります。
ピロリ菌感染の有無や内視鏡検査が診断に有効です。
慢性的な腹痛と便通異常(下痢・便秘・交互性)が1年以上続くケースで、精神的ストレスとの関連が指摘されています。
器質的疾患がないことを確認して診断されます。
血便や下痢、発熱、体重減少などを伴い、慢性的に腹痛が続く場合もあります。
内視鏡での粘膜病変の確認と病理診断が不可欠です。
胃の不快感や張り、食後の腹部胃部膨満感が続くものです。
機能的なものと器質的なものの区別が必要で、胃カメラや内服療法によって症状が改善します。
痛みの性質(鋭痛/鈍痛/けいれん痛)、持続時間、上下痢・吐き気・発熱の有無などを詳細に聞き取り、腹部の触診で反跳痛などを調べます。
炎症マーカー(CRP)、白血球数、肝膵酵素、電解質、腎機能などから感染性・消化器・全身性疾患の有無を把握します。
胃痛や慢性的な消化器症状には胃カメラ、大腸の症状には大腸カメラが推奨されます。
粘膜病変の確認と病理診断が可能です。
虫垂炎、胆石発作、腸閉塞などで激しい痛み・発熱・嘔吐を伴う場合は、自己判断ではなく直ちに病院を受診してください。
消化性潰瘍や機能性胃腸症には、胃酸抑制薬・消化薬のほか、ストレス改善・生活習慣の見直しが治療の柱となります。
抗生物質(感染性腸炎)、プロトンポンプ阻害薬(潰瘍)、消化酵素薬、鎮痛薬など、原因に応じた処方が行われます。
虫垂切除、胆嚢摘出術、腸閉塞に対する手術など、外科的介入が必要なケースもあります。医師と相談のうえ決定します。
ストレスが胃腸の運動に大きく影響します。
十分な睡眠・リラックス・適度な運動を心がけましょう。
腹痛が続く、症状が悪化する場合は、早めに消化器内科や外科を受診してください。
特に「夜間痛」「高熱付き」「血便」「体重減少」などは重要な受診のサインです。
急性の場合(数時間〜1日で激痛が来たなど)は緊急性が高い場合もあるためすぐに診察を。
慢性であれば生活習慣の見直し・専門医の相談が必要です。
自己判断で薬を続けるのは危険です。
特に胃腸粘膜に問題がある場合、悪化を招く可能性があるため、医師の診断後に使用するようにしてください。
刺激物の制限、食事の回数や量の調整、深呼吸やウォーキングなどの習慣により、胃腸の健康を支えることができます。
腹痛は非常に一般的な症状ですが、その背景には重大な疾患が潜んでいることも少なくありません。自己判断に頼らず、異常を感じたら医療機関での早めの診断と対応が健康維持の鍵となります。