高尿酸血症(痛風)とは

「高尿酸血症」とは、血液中の「尿酸」の濃度が基準よりも高い状態を指します。
血清尿酸値が7.0mg/dL以上である状態が、高尿酸血症とされます。

尿酸は、体内の細胞や食事に含まれるプリン体が分解されてできる老廃物です。
通常は腎臓から尿として排泄されますが、体内での産生が多すぎたり、排泄がうまくいかなくなったりすると血中にたまり、高尿酸血症となります。

この状態を放置すると、体内に蓄積された尿酸が結晶化します。
この結晶が関節などに沈着して激し炎症反応を引き起こすことがあります。
これが「痛風」です。
痛風は、文字通り「風が吹くだけでも痛い」と形容されるほどの強い痛み(痛風発作)を伴う疾患です。

高尿酸血症の症状

高尿酸血症自体には、基本的に自覚症状がありません。
そのため、健診の血液検査などで指摘されることが多い生活習慣病です。
一方、痛風の発作などを引き起こし、様々な症状が現れることで、高尿酸血症に気づく場合もあります。

また高尿酸血症は、糖尿病、高血圧、脂質異常症といった生活習慣病と合併しやすく、動脈硬化を促進し、脳血管疾患や心疾患のリスクが高まることが知られています。
尿酸値が高い場合は、痛風などの症状が出ていなくとも尿酸値を下げていくことが重要です。

痛風の症状

痛風では、足の親指の付け根などに、強い痛みをもたらす「痛風発作」が起こることが知られています。
患部が赤く腫れ、靴を履くのも困難になることがあります。
ほかには足の甲、アキレス腱のつけ根、膝の関節、手の関節などにも症状があらわれる場合があります。

痛風発作は、多くの場合、数日で症状が治まりますが、高尿酸血症自体が改善されないと、再発を繰り返します。
さらに放置していると、関節の変形や運動制限などにつながってしまう場合もあります。

また尿酸が腎臓に溜まり炎症を引き起こすことがあります。
これを痛風腎と言います。
進行すると腎臓結石を合併し、結石が尿管に至ると、背中や下腹部などに激痛をきたすことがあります。
さらに放置していると、腎機能低下を招いて慢性腎臓病を併発するため、注意が必要です。

高尿酸血症(痛風)の原因

高尿酸血症の原因は大きく3つに分けられます。

尿酸産生過剰型

主にプリン体を多く含む食品の食べ過ぎにより、体内で尿酸が過剰につくられてしまうものです。
食品の例として、肉や魚、鶏卵、魚卵、ビールなどがあります。
またビール以外で、プリン体ゼロとうたわれているお酒でも、アルコール自体に尿酸の生成を促進し、排泄を妨げる作用があるため、飲酒は大きな要因になります。
さらに無酸素運動などの高い強度の運動は、尿酸値を上昇させる場合があります。

尿酸排泄低下型

腎臓疾患による腎機能の低下や、使用している薬剤の影響、体質、脱水などが原因となって、尿からの尿酸の排泄がうまくいかないことで起こります。

混合型

上記両方の要因が重なって起こるものです。

日本人では約6割が尿酸排泄低下型とされており、尿酸産生過剰型が1割、混合型が3割といわれています。
近年ではこのほかに、腸管からの尿酸排泄が低下するタイプの高尿酸血症も報告されています。

また高尿酸血症は男性に圧倒的に多く発症し、痛風による炎症発作の症状がある方の約90%が成人男性と言われています。
女性に少ないのは、女性ホルモンが影響していると考えられており、閉経後に女性ホルモンが減少すると、女性でも高尿酸血症がやや増加する傾向にあります。

痛風の原因(発症するしくみ)

体内に過剰にたまった尿酸は、関節の軟骨や関節を守る滑膜に付着して結晶化します。
この結晶が蓄積すると剥がれ落ちると、これを異物(敵)とみなして免疫細胞である白血球が攻撃します。
このとき、白血球が出す炎症物質が、激しい痛みや腫れを引き起こします。
これが、痛風発作と呼ばれるものです。
一度治まっても、尿酸値が高いままだと再発のリスクが高くなります。

高尿酸血症(痛風)の治療

治療の基本は、生活習慣の改善と薬物療法により尿酸値を適正に保つことです。
それにより、痛風発作の予防と合併症リスクの軽減が可能になります。
痛風発作に関しては、痛みに対する対症療法を行います。

生活習慣の改善

食事療法

  • プリン体の多い食品を控える(レバー、魚の干物、干しシイタケ、魚卵、エビ、タコ、イカ、マグロ、カツオ、ビールなど)
  • 尿をアルカリ性にする効果のある野菜や果物を積極的に摂取する
  • 尿酸の排出を促進するため、適量の水分を摂る(目安は1日2リットル以上)
  • アルコールは控えめにする

運動療法

  • ウォーキングなどの適度な有酸素運動を定期的に行う習慣をつける
  • 急激な運動(無酸素運動)は尿酸を一時的に上昇させるため、注意する

その他

  • 十分な睡眠をとり、ストレスを軽減する

薬物療法

生活習慣の改善だけでは尿酸値がコントロールできない場合、薬物療法を行います。
尿酸値や症状の進行状況、合併症のリスクに応じて薬を選択していきます。

尿酸値を下げる薬(尿酸降下薬)

尿酸生成抑制薬

体内での尿酸の生成を抑制する薬です。
アロプリノール、フェブキソスタットなどがあります。

尿酸排泄促進薬

腎臓での尿酸の再吸収を抑え、尿から尿酸の排泄を促進する薬です。
ベンズブロマロンなどがあります。

痛風発作の急性期に対する薬

コルヒチン

炎症物質の放出を抑え、痛みや腫れを緩和する薬です。
痛風発作の予防薬としても使われます。

NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)

炎症と痛みを抑える効果が期待できます。
インドメタシン、ジクロフェナクなどがあります。

尿酸降下薬は痛風発作時に使用すると、尿酸値の急な変化がかえって痛風発作を誘発する場合があるため、症状が落ち着いてから開始するようにします。